設置概要
  以下の理由により、本リサーチ・コアでは、疾病(生活習慣病および要介護状態)予防や改善、および心身の生涯にわたる生活機能の維持や調節にとって必須である身体運動の役割やその効果に関して、基礎的(分子メカニズム含む)および介入研究を含む疫学的観点からの研究を展開するとともに、運動療法や運動指導に関する実践的な運動プログラムの開発・評価が実施できる研究基盤とその継続的な研究環境の維持のための人材育成システムを構築することにある。
   
  世界的規模での肥満やメタボリックシンドロームの増加、それらに伴う低水準の慢性炎症による様々な慢性疾患の発症、
ストレス社会の弊害としてのうつ病の漸増、加齢による筋力低下や骨量減少 ( 骨粗鬆化 ) に伴う転倒骨折者の増加、
さらには高齢化に伴うアルツハイマー病などの精神疾患の増加は、個人・家族・地域・国家レベルで課題解決すべき重大な関心事となっている。
   
  これらの疾患の発症には、遺伝的素因に加え、個人の生活習慣のあり方が大きく関与している。
   
  一方、適切な身体運動の実施・継続によって、様々な慢性疾患をはじめ、心血管系疾患、ある種の癌、 加齢に伴う神経性障害(学習・記憶障害、認知機能障害など)および筋力低下や骨量減少 ( 骨粗鬆化 ) に伴う転倒骨折、骨格筋障害、胃腸・免疫システムの変調、サルコペニア(加齢性筋減弱症)、およびQOL低下が抑制されることが紹介されている(熊谷秋三(責任編集):健康と運動の疫学入門、医学出版、 2008 )。
   
  しかしながら、世界規模で眺めた場合、身体運動の有効性に関する運動疫学研究の知見に加え、その機構解明に関する基礎的な研究証拠は不十分なままである。